萩と菊

hagitokiku

(この文章は、
 わたしのfacebook投稿
 2017/4/28日付からの転載です。)

文様よもやま話。

今回は秋草文様(特に「萩と菊」)です。

桜の余韻も覚めぬうちに、もう秋か
と、思われるかもしれませんが、
桜の次は、コレと決めていました・・。

(桜と共通して、
 和歌、お米などの話題も多いです。)

・・・

「秋草」は、いわゆる秋の七草

(山上憶良が詠んだ

萩の花 尾花 葛花    
瞿麦の花 女郎花   
また藤袴 朝貌の花 )

に竜胆、菊などを加え

これらのうちから何種類かをチョイスし
構成される図柄の総称です。

(尾花→薄、朝貌の花→桔梗、
 瞿麦も撫子の字の方が
 一般的ですかね。)

決まった形があるわけではありません。

秋草グループからの選抜チームなら
とりあえず「秋草」文様です。

個人的には
実りの秋の喜び、感謝とはウラハラに
幾ばくか漂う里山の寂寥感、

秋の風情→移ろいゆく時、無常観、
・・・そんなイメージです。

着物では、夏ものに涼しい秋を先取りするように
描かれることも多いです。

さて。

今回の主役、
画像の秋草文様ですが

ウチでは、特にこれを「萩と菊」と呼んで
他と区別しています。

(他にも秋草の型紙は、いくつか所持しています。)

「萩」と「菊」が他の草花に比べて、
やけに大仰に描いてある図案です。

(写真では、萩と菊しか
 ほとんど入っていないですが、
 撫子や桔梗などもちゃんと描かれています。)

初めは、どうして「萩」と「菊」だけが?
と思いました。

が、モチーフそれぞれの意味合いに
目を向けると、ある推論が導かれます。

(今回の主題はこのあたりです。)

それぞれを少し掘り下げます。

「菊」といえば、不老長寿ですね。
菊は奈良時代に中国から渡来したハーブです。

菊を浸した水(あるいは酒)を
飲むと長寿を保てるという故事とともに伝わり
宮廷行事にも取り入れられたそうです。

この故事から「菊水」という
吉祥文様も生まれました。

もう一つ、

「萩」は荒地に真っ先に繁茂する
パイオニア植物の一種、
とても生命力の強い植物です。

なので、繁栄、豊穣祈願の
文様にもなりました。

(この場合、「首を垂れる稲穂かな」的に
 ドバーッと鈴なりに花を描きます。
 本当に稲に見立てている訳です。)

・・・

どうでしょうか?

どうして萩と菊が
過剰と思えるくらい主張しているのか
ピンときたでしょうか?

私の推論は、こうです。

「両方とも縁起物だから、盛ってみた・・
 
つまり、コレ、
 ただの秋草な訳じゃなく
 
 婚礼衣装用の特別なもの、じゃね!?」

・・という訳です。

竹中金彩、

・・というか父は、婚礼衣装の金彩にも
長く携ってきました。

婚礼衣装といえば、
総柄で豪華絢爛なものが普通ですよね。

これは、
(もちろん見栄や親心もあるでしょうが・・)

悪い因縁を持ち込まないよう
全身をゴテゴテの吉祥文様で守り、
清める意味もあるそうです。

(婚礼の儀式には
 血脈が持つ因縁(←主にお嫁さんの家の)を断つ
 目的が含まれています。

 なので、リセットの意味を持つ「白」色、
 白無垢を着る場合が多いです。)

① 秋草グループのうち、吉祥メンバーのみ強調、
② ウチから発掘?された、

2つの状況証拠から
「婚礼用アレンジの秋草」という解釈は
自然に思われます。

文様は、きっと書き方次第で
同じモチーフでも、多様なメッセージを
作ることができるんですね。

・・深いです。

萩と菊の過剰さによって
日常の景色を、ハレの日の装いに
昇華させた(であろう)「萩と菊」は
秋の風情の中に、希望や願いを潜り込ませた
人間味ある素敵な図案だと思います。

実に「ウチらしい」
お祝いテイスト溢れる秋草「萩と菊」、
これからもバンバン使っていきたいです。